台湾越境ECの法規制と関税|北海道の化粧品・健康食品事業者が知っておくべきリスク管理
「北海道産のラベンダーを使った化粧品を台湾で売りたい」
「道産の素材を使ったサプリメントなら、台湾でも需要があるはずだ」
その読みは正しいです。実際にShopeeなどのモールでは、日本のコスメや健康食品はトップクラスの人気カテゴリです。
しかし、食品や雑貨と同じ感覚で発送してしまうと、痛い目を見ることになります。私はこれまで、「日本の基準ではOKなのに、台湾では薬機法違反となり、在庫がすべて廃棄処分になった」という悲劇を何度も見てきました。
特に北海道から発送する場合、返品コストは莫大です。
この記事では、北海道の化粧品・健康食品事業者が台湾進出する際、絶対に押さえておくべき「法規制」と「関税」のリアルなリスク管理術を解説します。
【大前提】「一般貿易」と「越境EC」のルールの違いを知る
まず、もっとも重要な戦略をお伝えします。
それは、最初から「一般貿易」を目指さず、「越境EC(個人輸入)」の枠組みを利用することです。
台湾で商品を販売するには、大きく分けて2つのルートがあります。
- 一般貿易(B2B): 現地法人や代理店を通して、正規に輸入・販売する。
- ハードル: TFDA(台湾の厚生省のような機関)への製品登録が必須。成分分析やパッケージの繁体字表記など、数百万円規模のコストと数ヶ月の時間がかかります。
- 越境EC(B2C): 日本から消費者に直接発送する(個人輸入扱い)。
- メリット: TFDAへの製品登録が原則不要です。日本のパッケージのまま送ることができ、テストマーケティングに最適です。
私たちEntechが推奨するのは、まずは「2. 越境EC」でスモールスタートし、売れる確証が得られてから「1. 一般貿易」へ移行するステップです。これだけで、初期リスクを劇的に下げることができます。
リスク①:その成分、台湾では「禁止」されていませんか?
「越境ECなら製品登録は不要」とお伝えしましたが、「何を売ってもいい」わけではありません。
もっとも恐ろしいのが**「禁止成分」**の混入です。
日本国内では普通に流通している成分でも、台湾では「医薬品」として扱われたり、「輸入禁止」に指定されていたりするケースがあります。
北海道企業が注意すべき具体例
- 化粧品(美白・ニキビケア):
特定の美白成分や、ニキビ治療に使われる成分が含まれている場合、「化粧品」ではなく「医薬品」とみなされ、個人の越境ECでも税関でストップする可能性があります。 - 健康食品(動物性由来):
北海道の強みである「牛・豚」由来のエキス(プラセンタやコラーゲンの一部など)は、検疫の対象となりやすく、非常にデリケートです。また、一部の漢方成分も規制対象です。
対策:
自社判断で「たぶん大丈夫」と送るのはギャンブルです。必ず事前に、成分表(INCI名)をもとに、台湾の規制リストと照らし合わせる**「成分プレチェック」**を行ってください。私たちEntechでも、この事前調査を徹底的に行っています。
リスク②:「2,000台湾ドル」の壁と受取拒否トラブル
次に見落としがちなのが、**「関税」と「営業税」**の問題です。
台湾の個人輸入において、1回の注文金額が「2,000台湾ドル(約9,000円〜10,000円)」を超えると、関税と営業税(5%)が課税されます。
なぜこれがリスクなのか?
問題は、税金を払うのが「受け取るお客様」である点です。
例えば、北海道から12,000円の化粧品セットを送ったとします。荷物が届いた際、お客様がいきなり配達員から「関税がかかるので追加でお金を払ってください」と言われたらどうなるでしょうか?
多くの台湾ユーザーは「そんなの聞いていない」と、受取拒否(キャンセル)をします。
こうなると最悪です。商品は北海道へ返送されますが、その返送料は高額なため、**「現地で廃棄処分」**を選択せざるを得なくなります。つまり、商品原価+行きの送料+廃棄費用がすべて損失になります。
対策:
- 価格設定: 1回の注文が2,000台湾ドル(約9,000円)以内に収まるセット商品をメインにする。
- 分割発送: 高額になる場合は、日を分けて2個口で発送する。
- DDP(関税元払い): 利益率は下がりますが、関税をショップ側が負担する配送モードを選ぶ(Shopeeの一部配送などで可能)。
リスク③:広告表現の規制(誇大広告)
「日本で使っているLP(ランディングページ)をそのまま翻訳すればいい」
これも非常に危険な考え方です。
台湾も日本同様、あるいはそれ以上に**「広告表現」への規制が厳しい国**です。特に化粧品や健康食品において、効果効能を断定する表現は、発覚すれば巨額の罰金対象となります。
- NG例: 「シミが消える」「1週間で5kg痩せる」「アトピーが治る」
- ビフォーアフター写真: 加工が疑われるものや、極端な変化を示す写真はSNS広告の審査に落ちるだけでなく、通報リスクがあります。
対策:
日本の薬機法(旧薬事法)の知識だけでなく、「台湾現地で許容される表現ライン」を知るネイティブによるチェックが不可欠です。AI翻訳では、この微妙なニュアンス(法に触れるかどうかの境界線)を判断できません。
まとめ:リスクを知れば、北海道ブランドは勝てる
北海道の化粧品・健康食品事業者が台湾進出する際のリスク管理をまとめます。
- まずは越境EC: 登録不要の個人輸入枠でテスト販売から始める。
- 成分チェック: 日本でOKでも台湾でNGな成分がないか事前にスクリーニングする。
- 2,000元の壁: 関税による受取拒否を防ぐため、商品単価と発送方法を調整する。
「なんだか難しそうだ」と思われたかもしれません。しかし、裏を返せば**「これらのルールさえ守れば、競合が少ないブルーオーシャンで戦える」**ということです。多くの企業がこのリスクに尻込みして参入しないからです。
株式会社Entechは、D2C事業の経験から「在庫を失う痛み」を誰よりも理解しています。だからこそ、単なる出店代行ではなく、「成分の事前調査」から「関税を考慮した価格設計」「リスクのない広告表現」まで、守りを固めた上での攻めの提案を行っています。
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